前編からのつづきです。
手ぬぐいづくりの行程「型置き(のり付け)」が終わりました。
次の行程、「染め」に移るのですが、
のり付けされた生地をどうするのかと思いきや、
いきなり地面にボーン!
「あら~」「えーー!」
そして、床に敷きつめてあったおがくずを、
上からバッサバッサと豪快にかけちゃいました・・。
こうやってノリの余分な水分を、おがくずに吸わせるんだそうです。
なるほど、だから床がおがくずだらけだったんですね。
まもなく、次の行程のお兄さんが
これまた豪快におがくずをミニ箒ではらいに来ました。
これでも丁寧にやってるんですよ~(笑)と。
次の行程「染め」です。
染めるのはこの特殊な台を使います。
染料が下に抜けるように隙間が空いているのです。
下にペダルが付いており、
踏むと染料がバキュームされる仕組みになっています。
色の塗り分けの準備をします。
生クリームをしぼる要領でノリを絞っていきます。
これが染料の土手(堤防)の役目をするんですね。
今回はブタさん一列ずつ色を塗り分けました。
職人の型はスイーっと、いとも簡単にしぼっていくんですが、
体験させてもらった私たちは、全然まっすぐにしぼれない。
というかその前に絞り器からノリが出ない!
すっごく絞るのに握力とコツが必要なんです。
なんでも、就職したての新人さんがこの作業をやると、
始めの一週間で手が腱鞘炎になって休むのが普通・・とか。σ(^_^;)
塗り分け(専門用語で「差し分け」)の準備が終わると、
細長い口のじょうろのようなヤカンで、
まんべんなく染料を流し込んでいきます。
これがまさに「注染(ちゅうせん)」という染め方の由来です。
これもまた簡単に見えるのですが、
体験させてもらうと操作が難しかったです。
染料がけっこう勢いよく出てくるので、下でペダルを踏みつつ、
うまくバキュームしないと、堤防をたまにまたいでしまったり・・
まあ・・それも“味”ということで、と今回は大目に見てもらいましたが、
職人さん曰く「上手なほうですよ」とお褒めの言葉をいただきました。
ひととおり終わると、次は生地を裏返して、裏からも同じ行程を繰り返します。
(↑下のほうのノリの土手は私たちがやりました。だから線がヨロヨロ・・)
「注染」で染めた生地の大きな特徴として、
表と裏の柄が同じに見えるという点は、この行程が入るからなんですね~。
表からも裏からもしっかり染めることで、表裏のない生地が仕上がるのです。
後から説明がありましたが、
「注染」で染めた生地は、液体を流すだけの染め方なので
生地にあまりダメージを与えず、吸水性や通気性もいいのだとか。
対してプリント生地は、片面にしか柄がないだけでなく、
インクを圧着する方法で作られている生地なので、
生地にはダメージが大きいので、耐久性が弱いのと、
生地の目にインクを塗り込んでしまっているから
吸水性、通気性もあまりよくないのだとか。
なるほど~。
皆さん、着るならプリント地じゃなく注染の浴衣ですよ。
これを聞くと注染の浴衣が着たくなりますよね。
染めの行程が終わると、今度は水洗いの行程へバトンタッチ。
先ほどの生地を水場でバチャバチャと水洗いしてノリを落とします。
もっとしばらく置いておくんだと思いきや、
けっこうすぐ水洗いしちゃうもんなんですね。
昔はこの行程を田川でやっていたそうです。
今はできないので、このような川っぽい洗い場を使ってやっていました。
水もこのままでは捨てられないので、
工場内でちゃんときれい処理にしてから下水に流しているそうです。
すごい、全自動!
布をセットすると機械が勝手に洗ってくれます(笑)。
ガチャコン、ガチャコンとすごい音をたてて動く単純な作りの機械なので、
なんだかジブリっぽいアナログ感が・・。
思わず笑ってしまいました。
巨大な脱水機にかけ、
天日干しするとできあがり~
いや~、仕上がりが楽しみ。
こちらは同じく外に干してあった生地。
藍染めかと思いきや、これは全部仕上げ用生地の両面に挟む捨て生地だそうで。
でもこうやって干して何度も再利用してるのだそうです。
たしかに、いろいろな柄が多重印刷されてるんですが、
これがまたいい感じで味のあるいい柄でした。
乾く間に、休憩がてら工場の直販コーナー。
浴衣地や手ぬぐいをちょっと安く買えました。
知らなかった-!
こちら、直販をやっているんだそうです。
門構えからなんとなく工場だけなのかな?と思われがちだそうですが
平日行けば、ここで生地を買えるらしいですよ。
といっても例年よりも繁忙期が長かったそうで、
この時期にしてはほとんど在庫が無い状態だそうで、
本当はもっとたくさんあるんだそうです。
盆明けならもっとあると思うと工場の人が言っていました。
そろそろ手ぬぐいも乾いてきたところで、
2階に上がらせてもらい、ベランダから外を望む。
こちらに布をおろしてくるんだそうです。
そして自動巻き取り機で、きれいにまるめられ反物の形になります。
生地がスムーズに巻き取れるように、床に穴が開いています。
だから2階でやる作業なんですね。
「巻かれた布は、こうやって次の工程のある下の作業場に落とすんです。」
と、床にあった扉をパカッと開いて、ゴロゴロゴロ~と。
すごい、なんか忍者屋敷みたい!
乾いた生地を同じ長さにして重ねていきます。
そしてはさみでスーーッと切ります。
これも職人技。
一人2枚お持ち帰りです。やった~。
完成!
ブタちゃん柄がカラフルでかわいい~。
本当は切り落とすのですが、せっかくなので耳をそのまま残してもらいました。
なんだか色見本みたいでおもしろいかなと。
そもそもこんな短時間で出来ちゃうんですね!
最初から2時ぐらいで完成してしまいました。
もっと1日2日ぐらいかかるんだと思っていた~
今回は市の講座で体験したのですが、
またやりたい!と思うぐらい、楽しい体験でした。
これは宇都宮の観光業としても成り立つんじゃないのかな~?
とも思いましたが、現状は難しいのかも・・。
なんでも手ぬぐいの染工場は、
全国でも数えるほどぐらい減少してしまっているようで、
こちらの中川染工場さんも、例年になく受注が多く、とても忙しいそうです。
(繁盛しているからいいことなんですけどね!)
でももっと「宮染め」を全国的に広めたいな~とも思いました。
それと、伝統工芸と聞いていたので、熟年の方々がいっぱい・・と思いきや、
とてもお若い方かたくさん働いていたのも印象的でした。
伝統工芸も若者がどんどん担っていかないとね。
そんな雰囲気も含めて、なんか活気があって良かったです。
工場の方々、市の職員さん、お世話になりました~。
(おしまい)
○中川染工場「宮染め」
http://www.somemono-nakagawa.com/
栃木県宇都宮市錦1丁目562
※平日は直売あり(敷地内に駐車OKだそうです)
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