今回は、探訪その後に調べた結果報告です。
そこで宇都宮市にある百目鬼通りの話を書きました。
すると、いただいたコメントで
いくつか同じ地名を教えていただいたのでした。
かんパパさんより
>那須塩原市にも「百目木(どうめき)」という地名がある
かほかさん、他の皆さんより
>益子町に「百目鬼川(どうめきがわ)」という川がある
そうか、宇都宮の百目鬼のほかにも
「百目鬼(百目木)」という地名はけっこうあるんだな~。
(県外にも山形県に「百目鬼温泉」というのがある)
はたまた
カブトムシさん、他の皆さんより
>百目鬼さんという苗字の方がいます
さらに、
☆TORI☆(・ω・)ゞさんからはこんなコメントも・・
>名字の全国分布図が出るサイトで「百目鬼さん」という苗字は、
栃木県に集中しています
むむ!!
検索してみると・・本当だ!
日本中の百目鬼さんが一番多いのは栃木県!!ヽ((◎д◎ ))ゝ
とこのように、
栃木県は「百目鬼」という名称に密接な関係にあることが分かりました。
宇都宮の百目鬼は、「百匹の鬼の頭目だった」という由来ですが、
他の地域はどうなんだろう?
そして、宇都宮の百目鬼と何か関連があるのだろうか?
という素朴な疑問をもとに、いろいろと図書館で調べてみました。
まず調べたのが、益子町の百目鬼川。
益子町に関する本をいろいろ読んでみたのですが、
鬼が出てくる民話はいくつかあったものの、
“百目鬼”という由来になりそうなものではなく、結局関連は分かりませんでした。
那須塩原市の百目木も、地名的に残っているのは
バス停、公民館ぐらいで由来までは判明せず・・
(´・ω・`)
そんな中、民話の本を読んでいたら新たな「百目鬼」を発見!
場所はなんと、粟野町!!(現在は鹿沼市)
上永野というところに、百目鬼塚(または百目塚)という塚があるそうな。
塚の北方に熊野神社があって、この社の宝物を埋葬したのが、この塚の起源。
もし人がこの塚に銭一文を賽銭として供すれば、後日必ず百倍になって戻ってくるというので、
その奇瑞にあやかろうとする遠近の人々が、多数参拝した時代があった。
百目鬼塚はかくして起こったと伝えられている。
(下野伝説集 あの山この里(小林友雄・著 栃の葉書房 昭和51年)より)
むむむ・・これまた由来が違う σ(^_^;)
ここで調査は行き詰まり、結局
県立図書館レファレンスサービスにお世話になることに・・・
すると、こんな回答が。
>『日本の地名 60の謎の地名を追って』
>(筒井功/著 河出書房新社2011)には、
>「廿六木(とどろき)/百笑(どめき)/百々女鬼(どどめき)/
>土泥(とどろ)/堂々(どうどう)」という項があり、そこに、
>右はいずれも、水の音によって付いた地名である。
>すなわちトドロキ、ドヨメキ、ドドメキ、 ドウドウなどの言葉が地名化されたのである。
>とあり、例として「百目木(どめき/どうめき)」「道目木( どうめき)」
>「百成(どうめき)」などが挙げられています(p125-128)。
なるほど~。
栃木県内の地名に限ったものではないですが、>右はいずれも、水の音によって付いた地名である。
>すなわちトドロキ、ドヨメキ、ドドメキ、
>とあり、例として「百目木(どめき/どうめき)」「道目木(
>「百成(どうめき)」などが挙げられています(p125-128)。
なるほど~。
そうか、歴史や民話じゃなくてこういう「地名分析」みたいな本を探せばいいのね。
と、再び図書館へ。
すると、ドンピシャな本を発見しました。
「とちぎの地名を探る」 塙静夫・著(随想舍 1996年)
なんと、おなじみの塙センセー(栃木歴史探訪の権威)じゃないですか!
早くこの本に気づけば良かった。
こちらには「百目鬼」という地名に関する由来が、
約2ページにわたり書かれておりました。
一部抜粋させていただくと・・
ドウメキは、地域によってトドメキ・ドドメキ、
あるいはトドメク・ドドメクと読んでいるところがある。
トドメキ・ドドメキは、動詞トドメク・ドドメクの連用形で、
水音の響く所とか、河川・堀などが
合流して音をたてて流れ落ちる所の意であり、
『俚言集覧』(江戸時代の国語辞書)に、
「渠(みぞ)の落合で鳴る所をトドメキという」とある。
なるほろ~。
県立図書館の方に調べていただいたとおり、
やはり水の音から来ているみたいですね。
さらにはこんな興味深いことも。
なぜドウメキ・ドドメキなどのドウ・ドドなどに「百」の字を当てるのであろうか。
これについて鏡味完二・明克著『地名の語源』に、ドドを「百百」と書くのは、
「十十(トト)を百と表したもの」とあると記している。つまり、十×十=百というわけだ。
だからトウトウ・ドウドウ・ドドと読むのであろう。
おおーーなるほどーー!!ヽ((◎д◎ ))ゝ
というか、すごいとこから『百』キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!
栃木県内には「百目鬼」と記した地名が大変多いとも、
この本には書いてありました。
以下の地名の小字名などに残っているそうです。
宇都宮塙田 真岡市高間木 河内町上田原 上三川町西蓼沼
芳賀町稲毛田 益子町小宅 茂木町小深 二宮町高田
鹿沼市下日向 高根沢町上柏崎 南那須町曲畑 栃木市平井町
壬生町藤井 小山市高椅 大平町下高島 岩舟町静
都賀町家中 田沼町作原 藤岡町大前
(※合併前の住所もありますが、そのまま表記しました)
さらに漢字が違うもの(道目鬼・道目木・堂目木・百目貫など)も含めると、
もっとたくさんあるようです。
いや~、とっても勉強になりましたねぇ~。
この本の「はじめに」に書いてあったのですが、
一般に流布している伝説的な誤った由来だけは何とも許せないので、
敢えて本書を世に問うこととし、併せて本県の地名研究が深化され、
一つの学問として軌道にのることを願って止まない。
と塙先生は思っていらっしゃるようで・・f^_^;
|д・)←鬼の爪を探していた輩
え~、まとめますと「百目鬼」という地名は、
「ドドド~!」という水の音が響く場所、川や堀などに付けられがちな名前。
ということですね。
益子町の百目鬼川もきっと、
ドドド~っと流れてたからその名前が付いたのかと・・(;^_^A
那須塩原市の百目木も、熊川という河川の近くでした。
この熊川は普段は水無川ですが、
台風時など豪雨などで氾濫も引き起こすとか・・
地名が多い=その近くに住む人も多い
ってことで、百目鬼さんという苗字も多いのでしょう。
宇都宮の百目鬼伝説のあった本願寺の前にも、
よく見たら川が流れていたぞ・・∑(゚Д゚)
その当てられた漢字や時代の事情から、
後々いろんな伝説や噂話(こじつけ?)が追加され、
由来が変化していったのかと推測されます。
まあでも、伝説ってのはロマンですからね~≧(´▽`)≦
「鬼の爪は、きっとある」
ーーそう信じておりますよ。
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第552回 百目鬼はどこへ の巻(前)
第552回 百目鬼はどこへ の巻(後)